部門

肥満症治療チーム

肥満は手術で治る可能性があります

世界では減量手術で健康を取り戻す患者さんが増えています。

古くから肥満は万病のもととされています。 高度な肥満患者さんの中には既存の治療方法では健康を取り戻せない方が多くみえました。 そのような患者さんへの新しい治療方法として、世界では減量手術が行われております。 米国では年間20万人以上に施行されており、日本の胃癌手術の件数の10倍以上となります。 しかしながら、日本では減量手術を受けることができる施設が全国でも限られていました。 そこで、小牧市民病院では地域の基幹病院として、患者さんがこの手術の選択もできるように取り組みを進めています。

糖尿病や高血圧症などの生活習慣病を治癒できる可能性があります。 内服薬やインスリン注射の負担や医療費を軽減できることが期待されます。

小牧市民病院で行われる肥満手術(腹腔鏡下スリーブ状切除術)の効果は以下のように報告されます。

およそ30%の脂肪の減量が期待できます。それに伴い糖尿病や高血圧症、高脂血症といった生活習慣病の改善が見込まれます。生活習慣病が治癒した患者さんは内服薬をやめることができます。 多くの方がインスリン注射をやめることができる可能性があります。
このことから、術後に医療費を大幅に削減できることが期待されます。特に、インスリン注射を中止できた場合は8万円/年間程度の医療費の負担軽減が試算されます。

まずは糖尿病・内分泌内科にかかっていただき、手術までの準備をします。

まずは糖尿病・内分泌内科を受診していただきます。手術前に1kgでも多く減量することで手術のリスクを減らせます。そのため、内科で減量や血糖コントロールのための入院を行います。
手術前後で食事・運動療法のサポートを十分に行うことで減量の成功率が上がります。小牧市民病院では術前から外科医、内科医、精神科医、管理栄養士、臨床心理士、看護師、薬剤師、理学療法士などがチームを組んで患者さんをサポートしていきます。

治療効果が大きく、手術のリスクが少ない以下の条件を満たした 糖尿病の患者さんが対象となります。

□ 年齢  25歳から60歳
□ BMI  30-40
     以下はおおよその目安です
     140cm:60-80kg、 150cm:68-90kg、 160cm:78-105kg    
     170cm:87-115kg、 180cm:100-130kg
□ 手術や麻酔が危険でない (重症の内臓疾患などがない)
□ 不安定な精神疾患がない

安全性には十分に配慮をしています。

院内の倫理審査委員会に承認された実施要領に基づき行われます。
手術は日本内視鏡外科学会技術認定取得者により実施されます。
術前後の患者さんの精神的な不安や負担を軽減できるようチームでサポートをしていきます。

減量手術のご相談・ご予約について  

当院の糖尿病・内分泌内科でくわしくご説明させていただきます。
かかりつけ医にご相談のうえ、受診予約をお取りください。
◇かかりつけ医をお持ちでない方でも地域連携室(0568-76-1434)で予約をお取りすることは可能です。
その場合は診察料の他に選定療養費(5,400円)が必要となります。

肥満症治療チーム 委員名簿 (2019/5/1現在)

医局

外科望月 能成 (委員長)
糖尿病内分泌内科落合 啓史
総合内科森 雅也
精神科野方 晋
消化器内科舘 佳彦

看護局

東7病棟 師長柴田 多鶴子
健診センター師長吉野 智恵
南3病棟 師長東 ひより
内科外来 主任石川 まゆみ
同上小副川 知子
内科外来南条 千恵
同上三村 和子
同上長谷川 重美
同上吉田 慶子
同上小檜山 梶世
同上今枝 敦子
同上安江 恵美
形成外科外来安江 志保

薬局

薬剤師水谷 貴樹
同上寺澤 麻実

検査部

検査技師鈴木 康浩
同上加藤 美穂
同上前田 佳成

栄養科

管理栄養士小塚 明弘
同上小松 恵
同上小椋 朱根
同上近藤 つかさ
同上大越 智美
同上野村 早

リハビリテーション科

理学療法士竹ノ内 良輔

メンタルヘルス

臨床心理士大脇 貴美子

引用文献

手術について

減量手術について

表1:術式別治療効果比較
(日本肥満症治療学会 外科症例全国登録より)
表1:術式別治療効果比較
(日本肥満症治療学会 外科症例全国登録より)

・腹腔鏡下調節性胃バンディング手術
・腹腔鏡下胃スリーブ切除術(当院で行う手術です)
・腹腔鏡下胃バイパス手術
等があります。
 日本肥満症治療学会による本邦の減量手術は集計では2008年から2014年の間に857例施行されています。これらの患者さんの手術中の合併症は2.6%(胃以外の臓器の損傷、出血、手術器械のトラブルなど)、術後の合併症は9.8%(出血、つなぎ目や残った胃が細くなる狭窄、つなぎ目がうまくつながらない縫合不全、膿だまりができる膿瘍など)に発生しています。また合併症の発生などにより再び手術を行った割合は2.7%、手術に関連して死亡に至ったケースはありませんでした。以上の結果より日本肥満症学会では減量手術は安全に行うことができると見解を述べています。
 また上記手術の治療効果については全術式で体重の減量効果および糖尿病などの肥満に関連する病気の改善効果がみられています(表1)。

当院での手術は腹腔鏡下胃スリーブ切除術

当院では減量手術としては腹腔鏡下胃スリーブ切除術を行っています。腹腔鏡下胃スリーブ切除術は上記に示すように本邦で最も多く行われています。その特徴としては手術操作が単純明快であること、バイパスに比べると栄養吸収機能障害がほとんどなく合併症の頻度が少ないこと、本邦の集計では上記表1に示すように肥満治療効果がよいことがあります。
 ただし減量手術が多く行われている欧米のデータでは高度な肥満の方や糖尿病などの期間が長い方はバイパス手術の方が比較的治療効果が高いという報告もあり、ご相談により手術適応は決めさせていただきます。

腹腔鏡下胃スリーブ切除術の実際

腹腔鏡下手術について。   
腹腔鏡のイメージは以下図1に示すごとくです。

図1 腹腔鏡下手術
図1 腹腔鏡下手術

腹腔鏡手術については下記に示すようメリットおよびデメリットがありますが減量手術ではメリットが上回るので原則腹腔鏡下に手術を行います。

メリット

  1. 創が小さく創痛が軽微で運動制限が少なく、美容上優れています。
  2. 術後、腸の動きの回復が早く、早期からの食事摂取が可能となります。ひいては早期退院、早期社会復帰につながります。
  3. 手術後の癒着による腸の閉塞の頻度が少なくなります。
  4. 内視鏡を通してモニターでみえるため拡大効果がえられます。  特に減量手術では開腹に比較して視野がとりやすく手術がスムースに行えます。

デメリット

  1. 状況によって腹腔鏡手術が適応できない場合があります(開腹手術歴がある、心臓や肺に持病があるなど)。
  2. 頻度は低いですが腹腔鏡特有の合併症があります。 ポート挿入時や術中見えていないところでの電気メスや鉗子類の操作により健常臓器に傷がつき開腹術への移行を余儀なくされたり、後日臓器の損傷が判明して再手術が必要となることもあります。   

胃スリーブ切除術について

胃スリーブ切除は胃の外側を大半切除してバナナの様に細くします。容量は約1/10に縮小しますので、食事摂取量が制限されことにより減量を目指します(図2)。

図2:胃スリーブ切除
図2:胃スリーブ切除

胃スリーブ切除の手術の合併症として

 早期合併症:切離した胃などからの出血、胃を切除した部位がうまくつながらない縫合不全、おなかの中の膿だまり(膿瘍)など。
 また、全身的合併症として肺炎、無気肺、肺塞栓などの呼吸器合併症、心筋梗塞や不整脈、脳卒中などの心血管系合併症にも注意が必要です。
 晩期合併症:バナナの様にした胃がねじれなどにより細くなり食事ができなくなる(狭窄)、胸焼けがひどくなる(逆流性食道炎)、手術部位への腸が癒着することにより起こる腸閉塞、手術部位の腹壁が弱くなる腹壁瘢痕ヘルニアなど。


 合併症を起こすと、入院期間が長引くだけでなく、安静や絶食が必要になることや、ひとつの合併症がさらにその他の合併症を引き起こすこともあります。また再手術が必要となることもあります。手術死亡は0.5-1%程度と報告されています。