部門

放射線治療

放射線治療とは

放射線治療は、手術・化学療法とならぶ悪性腫瘍に対する治療法の3本柱の1つであり、臓器の機能・形態の温存を可能にする優れた治療法です。また、局所療法であるため全身への影響が少なく、体調の良い患者様の場合は外来での通院治療も可能です。当院では放射線を用い、病巣に対して外部照射により治療を行っております。

高精度放射線治療装置TRUE BEAM®

当院では、放射線治療装置である米国「バリアンメディカルシステムズ社」のTRUE BEAM®を2019年8月より導入しております。IMRTだけでなく、定位放射線治療(SRT)や体幹部定位放射線治療(SBRT)、呼吸同期照射、そして深吸気息止め照射(DIBH)などの様々な高精度放射線治療も行っています。それ以外にも骨転移の緩和照射に限りますが、1回の治療で完遂できる治療も積極的に導入しております。

強度変調放射線治療(IMRT)とは

当院では、従来の3次元原体照射(以下、3D-CRT)の進化形である強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy、以下IMRT)の施設基準認定を2022年12月に取得し、IMRTを開始致しました。
従来の3D-CRTでも照射される放射線を腫瘍の形に合わせ、正常な臓器への副作用(被ばく)を最低限に抑え治療をしています。しかし、3D-CRTでは正常な臓器への副作用を減らすために、線量分布に急峻な凹みを作ることが難しい場合もありました。一方、IMRTは腫瘍の形に合わせて放射線の線量に強弱をつけ(強度変調)、腫瘍本体に集中して照射すると同時に、その周囲の正常組織への不要な被ばくを最小限に抑えることを可能にします(図1 参照)。

前立腺がんの場合、前立腺へ十分な放射線量を集中させながら、正常組織である膀胱や直腸への線量減らすことが可能です(図2 黄色矢印 参照)。放射線治療最大のメリットは外科的手術に比べ体の負担が少ないことであり、IMRTでは従来の治療法より合併症や副作用も少なくすることが期待できます。放射線が照射された範囲内の腫瘍細胞が減少・死滅することにより、腫瘍の縮小・消失等が期待されます。外来治療の場合、1か月半程度、平日毎日の通院が必要となります。IMRTの適応部位は前立腺だけでなく、頭頚部、肺、骨盤など様々です。ご不明な点などありましたら、是非放射線治療科へご相談ください。

図1. IMRTの原理
図1. IMRTの原理

IMRTの紹介動画はこちら。

図2. 3D-CRTとIMRTとの比較 
注)臨床データではありません
図2. 3D-CRTとIMRTとの比較
注)臨床データではありません

診察から放射線治療終了までの順序

1) IMRT治療前の放射線治療科医師による診察
放射線治療科にて放射線治療専門医の診察を受けます。診察では医師より放射線治療の効果、副作用、方法、日程等についての説明があります。
 ↓
2) IMRT治療計画用CTおよびMRIの撮影
放射線治療の計画立案に必要な治療計画CT及び治療計画MRIを撮影します。必要に応じて、固定具を作成します。
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3) IMRT治療計画 (7~10日程)
撮影した画像を基に放射線治療科専門医師と医学物理士が放射線治療計画を立案します。画像を用いて緻密な治療計画を立て、整合性を確認するのに7~10日程が必要となります。この治療開始日までの間、基本的にご来院いただく必要はありません。
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4) IMRT治療・問診(毎日)・放射線治療科診察(毎週)
治療が開始してから週5回の通院が必要となります。治療期間中は週に1度放射線治療科医師の診察を受け、また診察日以外は放射線治療看護師の問診を受けて頂きます、副作用が現れた場合はすぐに医師や看護師にご相談ください。
 ↓
5) 治療終了

そのほかの高精度放射線治療

IMRT以外の治療方法として、体幹部定位放射線治療(SBRT)や乳がんの深吸気息止め照射(DIBH)についてもご紹介致します。

体幹部定位放射線治療(SBRT)

肺がんに対してピンポイントで狙い高線量を照射する照射法です。中には呼吸停止下照射や呼吸同期照射も行っています。

深吸気息止め照射(DIBH)

左側の乳房照射の場合、心臓に放射線が当たることによる心血管系合併症のリスクを減らすためにDIBHを行っています。大きく息を吸い乳房と心臓との距離を空けることで心臓への被ばくを減らすための照射法で、当院では2019年から開始しております。

安心して放射線治療をうけられるように・・・

患者さんが安心して放射線治療を受けられるように、毎日科内カンファレンスを行い、放射線治療の安全性やより良いサービスが受けられるように多職種で意見を交わし最善を尽くしています。放射線治療科では常勤2名の放射線治療専門医が在籍し、全国でも数少ない放射線治療専門医学物理士(2022年4月1日現在、79名)や、その他多数の医学物理士や放射線治療品質管理士、放射線治療専門放射線治療技師、治療専従看護師が在籍し高度な技術を要する治療も行っています。

科内カンファレンス
科内カンファレンス

また、第三者機関(公益財団法人 医用原子力技術研究振興財団)による出力測定を定期的に受けており、放射線治療の品質管理も徹底しております。そのほか以下多数の施設基準認定を取得しております
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